個人事業より法人が有利

 事業を始める際に、いきなり法人化しても、まずは個人事業から始めてもどちらでも構わないと思います。ビジネスで大切なことは形よりも中身、つまり儲けることなのですから。
 しかし、最初は個人事業でスタートしたビジネスも、軌道に乗ってくると必ずと言っていいほど法人化を考えなければならない時期がくるものです。それはお客様からの信用面だったり、取引先との契約に関してだったり、納税問題だったりします。つまりビジネスというのは、ある程度軌道に乗るのなら、やはり「法人」として活動するのがベストな選択と言えそうなのです。
 それならばいっそ、最初から法人にしてスタートするのがいいことになります。これならば途中で契約書の内容を、個人から法人に切り替える手間も省けます。銀行口座なども最初から法人名義でつくっておけば、いちいちお客様に振込先の変更をお知らせしなくても済みますね。名刺や封筒なども無駄になることはありません。
 ところが儲かるかどうかわからないビジネスのスタート時点で、全員がいきなり法人化にはできないようです。なぜならば、会社をつくって法人化するには、お金と手間と運営が大変だからです。

 通常のビジネスを始めるときに、必ず法人にしないとイケナイということはありません。法人にしないと儲からないということも基本的にはないのです。特殊な場合を除いて、都心の一等地に事務所や店舗を構えないと商売できないということもないでしょう。
 今は「モノあまり」「情報過多」の世の中です(おまけに長引く不況です)。そうそうあなたの考えているビジネスプランが、思い通りの売上げになるとは限りません。
 最初にコストをかけずに始めていれば、撤退や軌道修正も楽にできます。下手に大きな借り入れなどをして始めてしまうと、予定通りの売上げが上がらなかった場合には身動きがとれなくなってしまうのです。

 個人事業に比べて、法人のほうがどういった点で有利になるのでしょうか。 

■税制面で有利
個人事業では、早い話が収入の半分近くが税金として持っていかれてしまうのです。個人事業では「会社の稼ぎ=あなたの稼ぎ」という考え方なのです。
ところが法人(会社)では、収入のうちからあなたに役員報酬という型の給与が払われます。つまり会社の稼ぎとあなたの稼ぎは違うものになるわけです。
例えばあなたが個人事業で月に300万円の売上げを上げたとしましょう。仕入れや電話代などの必要経費が仮に150万円だったとすると、残りの150万円が利益ということになります。極端な話がこの150万円に対して税金がかかってくることになるのです。
ところがこれが法人の場合は、あなたの給与が月に100万円と仮定すると、300万円から給与の100万円と必要経費の150万円を差し引き、残りの50万円に対して税金がかかることになるのです。もちろん、給与のほうにもサラリーマンの給与所得控除というありがたいおまけが付きます。
経費に対する考え方も個人事業と法人では違いがあります。
個人事業ではどこまでが会社として使ったのか、どこからが個人のものかを区別するのが難しいので、場合によっては認められなくなることが多いのです。ところが法人の場合は、個人とは明確に区別されているので、家賃でも電話代でも車の購入費でも、当然のこととして経費で計上できます。交際費なども年間の枠が取ってあるのです。
もっとも法人の場合でも、何でもかんでも経費として認められるわけではありません。しかし個人事業よりも会社の経費として認められる度合いが高くなることは事実なのです。
 
■信用面で有利
法人にするメリットは税金面のことだけではありません。案外こちらの信用面のほうが、日々骨身に感じることかもしれません。
あなたのところからサービスを受けたり、商品を購入するお客様の中には、あなたの会社や店がきちんとした『法人』になっているかどうかを気にする人もたくさんいるはずです。取引の相手が法人ともなれば、個人事業の組織など相手にしてくれないことも多いのです。寂しいことですが、これが現実なのです。
なぜこれほど、個人事業は信用されないのでしょうか。それは、あなたにもしものことがあったら、そこまでで終わってしまう事業形態だからです。法人ならば、仮に社長のあなたにもしものことがあっても、会社そのものは存続できます。
また、あなたのビジネスが上手くいって、人手が足りないようなときも、個人事業より法人のほうが人材も集めやすいものです。店舗ならまだしも、個人事業の会社に就職しようという人はまずいないでしょう。
 
■契約上有利
ビジネスが上手くいくようになると、いろいろな契約も必要になってくるでしょう。
仕入先との正式な契約、クレジットカード会社との契約、その他サービスの契約など…。こういう契約を交わすときの条件の中に「法人であること」と明記されているものがけっこうあります。添付書類として登記簿謄本などを要求してくるケースです。
おそらくこれも、法人としての社会的な責任と会社の存続性などを問われてのことでしょう。悲しいかな個人事業のままでは、こういうケースのときに契約ができないことになってしまうのです。
 
■数字の管理とやる気のうえで有利
個人事業だと、どうしても毎月の帳簿があやふやになってきます。いわゆる「どんぶり勘定」というやつになってしまいがちです。
ところが法人にすると、きっちり帳簿付けが義務づけられているので、嫌でも一生懸命やらなくてはなりません。これはこれで、小さな会社にはけっこう大変なことなのですが、これによって『見えてくるもの』があることも事実です。いわゆる計数管理というやつです。
売掛・買掛などの管理も、どんぶり勘定でやっていては「勘定合って銭足らず」なんてことになりやすいのですが、しっかり帳簿を付けて管理しているとコントロールもしやすくなります。
また、個人事業と違って、会社を経営しているという意識を持つようになると、『やる気』にも違いが出てくるから不思議なものです

 

 その他にも国民健康保険・国民年金から社会保険・厚生年金に入れるなど、細かいメリットはまだまだあります。 
 よく、「法人にすると融資を受けやすい」という話も耳にしますが、これははっきりいってウソです。日本の金融機関は、法人にしたくらいで簡単に融資をするようなところではありません。
 よっぽど担保になるような財産があるか、信用のある保証人を用意しない限り簡単には融資は受けられません。逆にいうと、個人事業でも大きな担保があったり、確実な保証人がいれば銀行は喜んでお金を貸してくれます。銀行とはそういうところなのです、過度の期待は禁物です。
 もちろん、条件が同じならば個人事業よりも法人のほうが多少有利、ということはあると思いますが。

 同様に、「法人にすると有限責任だからいい(株式会社と有限会社の場合)」という話があります。これは会社が抱えた負債などに対して、出資した資本金の範囲でしか責任を負わなくていいというものです。
 しかしこれも、お金に関しては意味がないと考えておくべきです。
 金融機関のみだけでなく、どこの取引先も有限責任の代表者とだけ契約をすることはまずありません。必ず、もしものために代表者の個人保証をとるものです。つまり、この連帯保証をした時点で、事実上は有限責任ではなくなるということなのです。
 わかりやすく言うと、主契約者の会社は有限責任でも、連帯保証をした代表者個人は無限責任を負わせられることになるのです。
 したがって、融資と有限責任に関しては、法人化することのメリットにはならないと私は考えています。

 


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