日本で会社をつくらない

 会社をつくるのに、日本で設立しなければいけないということはありません。
 法人の設立には「会社設立準拠法」というような法律があり、国によって会社をつくれる条件が変わってきます。
 例えば日本の株式会社の場合は、資本金の最低額1000万円・定款の認証が必要・取締役は最低3人必要・監査役も最低1人必要・代表取締役は日本に居住している必要があるなどというのがそれです。
 同じ株式会社の設立でも国によっては、最低資本金の額の設定がない・定款の認証等は不要・役員は1人でもOK・しかもその国に住んでいなくても大丈夫などという法律の国がたくさんあるのです。

 会社というものの設立・運営に関しては、国によって考え方がだいぶ違ってきます。
 最低資本金の考え方などを例にとっても、日本では法人という社会的な影響を考えて、まず器をしっかりさせようというような考え方です。ところが海外などでは、まず会社をつくる、そして事業計画に基づいて必要な資金を調達するという考え方なので、設立当初の資本金の額というのはそんなに問題にならないのです。
 どちらが偉いかなどという視点ではありません、考え方の違いなのです。私などは株式会社の最低資本金額の1000万円というのは、何の意味も持たないと考えています。会社の通帳などにほとんど現金はなく、あるのは借金ばかりという株式会社などざらにあります。そもそも1000万円の資本金さえ借金でまかなっている会社もあるのです。資本金が1000万円の株式会社だから「安心」、そんな風に考えている人はまずいないでしょう。

 考え方の違いは定款の『事業の目的』などにもあらわれます。
 日本では設立後のトラブルを避けるために、定款の事業目的の記入などには必要以上の神経を使うのが普通です。ところが海外の法人設立の場合は、定款の事業目的などはアバウトなところが多いのです。
 アメリカなどは裁判の国と言われているくらいです。まずは事業をやらしてみて、問題が起こるようなら裁判で解決しようというような風潮なのです。
 このように国によって違う会社設立の考え方をうまく利用すれば、会社を設立しようという人にとってはまさに好都合、敷居が低くなるわけです。

 国によって違う会社に対する考え方は、運営面でもあらわれます。日本の会社は事業に必要な資金を、金融機関などからの融資によって調達しようとします。しかし海外の会社は、これを投資によって調達しようとします。アメリカなどは、ベンチャーに投資する投資家がたくさんいるのです。エンジェルなどという言葉を、みなさんも聞いたことがあるでしょう。
 「ゆうし」と「とうし」は一文字違いですが、意味は天と地ほど違ってきます。融資も投資も、必要なお金を集める手段には違いありません。どちらも利息なり配当という形で、出資元に見返りを取られます。しかし融資はあくまでも借金です、事業に失敗しても、借りたお金は返さなくてはなりません。
 これに対して投資は、投資家のビジネスなのです。投資家は、ここはと目を付けたところに投資して配当を得ます。あくまでも自己責任で投資しているのですから、万が一事業に失敗しても返済の義務はありません。
 もちろん、いつまでも成果を出せなかったり、失敗を繰り返していては事業家としての信用を失います。信用を失えば、さらなる投資や再度の投資はしてもらえなくなります。そういう意味では、ビジネスに対して非常に厳しく取り組まざる得なくなります。
 ただし融資と違って、一度の失敗で壊滅的な打撃を受け、立ち直れなくなるような事態は避けられることが多いのです。
 今、やっと日本でも投資という意識が生まれてきました。まだまだ一般的な形ではありませんが、これから事業を始める人は融資ではなく、投資を考慮に入れる必要もあるでしょう。

 海外に法人を設立した場合、その会社の日本での立場はどうなるのでしょうか?
 日本の商法では、「外国会社は、日本において継続して取引を行おうとするときは、日本における代表者を定め、その住所又はその他の場所に営業所を設け、かつ、その営業所について登記及び公告をしなければならない(商法479条1項・2項)」と規定しています。
 ようするに、日本で定期的に商売をするなら、営業所をつくって登記する必要があるよということです。逆に言うと日本での売上が偶発的に発生したり、利益が伴わない活動(マーケティングや広報活動)の場合には登記の必要はないということになります。
 これらの規定に違反して、登記をせずに日本において継続して取引した外国会社は、過料の制裁を受け、またその取引について外国会社を代表または代理した者は、その取引につき会社と連帯して責任を負うことになります。

 ということは、日本でビジネスを行うのであれば、日本の法務局に登記をしなくてはなりません。この登記のことを「外国会社の営業所設置登記」と言いますが、これにより通常の株式会社などと同等の権利と義務を得ることになります(法人格)。しかも「外国会社の営業所設置登記」に関わる費用は登録免許税の9万円だけなのです。
 9万円を払って法務局に登記すれば、株式会社や有限会社と同じように法人のメリットを授かることができるのです。登記簿謄本や印鑑証明が取れます(契約に支障がない)・有限責任です・税務上有利・co.jpドメインも取れるなどということが可能になるわけです。
 ちなみにこういう形態の場合は、海外で登記した会社が「本店(もしくは本社)」、日本で登記した会社は「支店(もしくは日本支社)」ということになります。日本の登記簿謄本や印鑑証明書でも、本店の所在地の欄には外国の住所が記載されます。

  


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