日米の税務申告について
   

 米国に会社をつくって、なおかつ日本にも営業所設置登記をした場合は、税務申告などはどのようになるのでしょうか?
 ハワイで会社をつくった場合は、ハワイ(米国)が本社所在地の米国法人となります。米国法人の場合は、全世界所得による合算会計をおこなわなくてはなりません。これは米国以外の国の収入や支出も合算で組み入れて、利益や税額を計算するものです。簡単に言うと、「(米国での収入+日本での収入)-(米国での経費+日本での経費)=利益」ということになります。もちろんこの利益から米国の税率によって納税額が算出されます。
 また一方で日本の支店には「日本国内に源泉のある収入分だけを国内で申告し納税する」というルールがあります。
 「日本での収入 - 日本での経費=利益」で、この利益から日本での税額が算出されます。もちろんこの税金は日本で納めることになります。
 日米の間には「二重課税防止」の協定がありますから、日本で納めた税金分は米国で納める必要がありません。
 「(米国での収入+日本での収入)-(米国での経費+日本での経費)=利益」この利益から算出される税額から、日本で納めた分は差し引きます。「米国で算出された税額 - 日本で納めた税金分=米国に納める税額」ということになります。
 この「全世界所得による申告と納税」が原則にはなるのですが、そうすると日本とアメリカ両国で会計処理をしなければならなくなります。わかりやすく言うと、日本では日本で税理士さんにお願いして決算処理をする。さらにハワイではハワイで会計士さんにお願いして(英文による)決算処理をするということです。つまり日米で会計士さんが必要になることになります。
 ハワイの本店でも日本の支店でも売り上げがある会社は別にしても、ハワイの本店がペーパーカンパニー、つまり実際には日本の支店でしか活動していない会社にとっては結構痛手です。

 米国の本社で決算と納税をおこなう場合は、弊社が会計士をご紹介いたします。実際、申告と納税は、向こうで英文ベースでおこなわれるのですから、米国在住の会計士のほうが何かと都合がいいでしょう。日本の税理士にお願いする場合は、国際税務に詳しく英文会計をマスターしている人を探さなくてはいけないでしょう。しかも、申告と実際の納税は米国でおこなわなくてはいけませんから、けっこう高い料金になってしまうでしょう。
 そんなに大きなお金の動きがないあいだは、年一回の決算時に会計士にお願いするパターンででもすむようです。
 本来はアメリカでも複式簿記による記帳が義務づけられています。しかし、現実では英文簿記による帳簿も特に記帳する必要はなく、チェックブック・レシート・銀行残高票などの書類を保存しておき、エクセルなどの表計算ソフトにおこづかい帳のように記入したものを会計士にまとめて渡せば済んでしまうようです。ただし、これは担当する会計士にもよります。
 いずれにしろ米国の本社で所得があった場合は、米国の会計士(もしくは国際会計を扱っている税理士)に決算をお願いしてしまうのがベストでしょう。

 外国会社の税務上のメリットとデメリットは何でしょうか。まずメリットは、片方の損失をもう片方の利益で相殺できるということです。本社(支社)の損失を、ある程度支社(本社)に負担させることができます。本社(支社)からの支社(本社)への利益配分は源泉徴収の対象から外されるということもあります。(全世界所得による税務申告をおこなっている場合)
 一方デメリットとしては、本社(支社)の債務や責任が支社(本社)まで及ぶということがあります。アメリカの裁判・税法の管轄が本社を通じて日本の支社にまで及ぶことがあります。この場合、税務処理も調査の対象となるのです。

● 日米の源泉について
 ハワイに会社をつくって日本にも支店登記したら、税金は日本で納めるのでしょうか?それとも米国で納めるのでしょうか?
 日米の税法では「日本に源泉があるものに関しては日本で納税、海外に源泉があるものに関しては海外で納税」と定めています。ここで難しいのは源泉の決め方です。日本とハワイにお店を持って営業しているような場合は簡単です。このような場合は、日本のお店の売り上げに関しては日本で納税、ハワイのお店の売り上げに関しては米国で納税ということになるからです。しかしインターネットなどの普及により源泉がどちらにあるのか区別が難しくなってきました。例えば日本でインターネットショップを行っている会社のホームページ上では米国の住所表記がされていて送金も海外口座にドルでおこなうような場合です。
 弊社のプログラムでハワイに法人設立をする方の中には、自分一人だけで会社をつくる方もたくさんいらっしゃいます。この場合はだいたい一人日本で営業活動をおこなっています。
 国税局では源泉の考え方として、「役務の提供をどこでおこなっているか」という事を重視するような方向で対処しています。役務の提供とは、簡単に言うと「その仕事をどこでやったか?」ということです。ハワイに会社があり、「この仕事は米国本社の分だ」と言っても実際に日本で行っている仕事(ハワイに事務所がなく、ハワイでの人件費等が発生していなければ)だったとしたら、これは日本に源泉があるということになります。当然その仕事に関わる売上と経費は、日本で納税申告することになります。

● 日本での経理はどうするか?
 日本の支社の場合の経理はどうすればいいでしょうか?
 日本の法人は通常、税務上有利な青色申告の申請をしています。私たちのような外国会社の場合でも同様です。そうすると複式簿記での記帳が義務づけられているし、給与をはじめとした「簿記上の取引」もたくさん発生することになるでしょう。したがって経理はちょっと大変です。
 仕訳や記帳に不慣れな人は、税理士と顧問契約などをして毎月の経理を見てもらったほうがいいかもしれません。もちろん毎月の顧問料が発生するので、売上が小さい会社ではちょっときついかもしれませんが…。
 仕訳や記帳の知識が多少ある人は、ご自分でコツコツと勉強し毎月の記帳をしてみてもいいでしょう。そして決算期に税理士にお願いして決算書を作ってもらいます。

 小さい会社では、なかなか経理専門の部署などはつくれないものです。誰かが兼業で経理もこなさくてはいけないでしょう。勘定科目や仕訳については勉強するしかありませんが、記帳はパソコンの会計ソフトを使うととても楽です。間違いなどを発見しても、簡単に数ヶ月前に遡って修正することができます。
 そして経理で大切なことは記帳を溜めないこと。会社の規模にもよりますが、せいぜい週に1回くらいは入力するようにしましょう。
 ちなみに外国会社の日本支社だからといって、日々の経理上特に変わったことをすることはありません。源泉所得税の額も、社会保険料も、経費の扱いも通常の内国法人と同じなのです。

 


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